上場株式等に係る配当所得等の課税特例の改正について
【上場株式等に係る配当所得等の課税特例の改正の概要】
「上場株式等に係る配当所得等の課税特例」が令和4年度税制改正において見直され、この適用対象となる「大口株主等」の定義が変更になります。これにより、令和5年10月1日以降に支払いを受ける配当等について、「上場株式等に係る配当所得等の課税特例」の適用を受けられなくなる場合もあります。
【上場株式等に係る配当所得等の課税特例とは】
上場株式等に係る配当所得等については、①総合課税方式、②申告不要方式、③申告分離課税方式の3つの課税方式があり、納税義務者が所得税の確定申告及び個人住民税の申告を行うことにより、所得税と個人住民税において異なる課税方式の選択が可能になります。
ただし、大口株主等が支払いを受ける上場株式等の配当等は、総合課税の対象となり、申告分離課税や確定申告不要制度(少額配当である場合を除きます。) を選択することはできません。
令和4年度改正では、この特例の不適用の条件である「大口株主等」の判定方法が見直しとなりました。
【上場株式等に係る配当所得等の課税特例の改正内容】
保有している株式の持株割合3%以上の場合は、「大口株主等」に該当します。この持株割合の判定は、個人株主の保有数のみで行なっていました。令和4年度税制改正によって、令和5年10月1日以後に支払われる上場株式等の配当等については、その支払いを受ける方およびその支払いを受ける方を判定の基礎となる株主として選定した場合に同族会社に該当する法人が保有する株式等の発行済株式等の総数等に占める割合(株式等保有割合)が3%以上となる場合、その支払われる配当等については、大口株主等に該当することになるため、①総合課税方式のみで申告することになり、②申告不要方式、③申告分離課税方式は選択できなくなります。
【上場株式等に係る配当所得等の課税特例の具体例】
例えば、法人Aの株式等について、個人株主が2%保有し、法人B(個人株主が50%超を有する同族会社)が1%を保有していたとします。
①改正前
改正前であれば、個人株主の持分割合のみで「大口株主等」の判定を行うため、持分割合は2%となり、3%未満のため、「大口株主等」には該当しないこととなります。
②改正後
改正後は、個人株主の持分割合と同族会社の持分割合を合算した持分割合で「大口株主等」の判定を行うため、持分割合は2%+1%=3%となり、3%以上のため、「大口株主等」に該当することとなります。