フリーランスが立替払いの費用の源泉徴収 立替払いの「領収書の宛名」の記載で判断
企業がフリーランスと業務委託契約を交わし、企画・デザイン制作や原稿、講演などを依頼することは少なくありません。例えば、会社が出張を伴う業務を依頼したA氏から請求書を受け取ったのですが、その請求書にホテル代と交通機関の領収書が入っていた場合、出張した際に旅費・交通費等を立替払いしたものだと思われますが、この立替払いの旅費・交通費等を精算した場合には、報酬・料金と同様に源泉徴収する必要があるのでしょうか。
個人事業主として事業を行っている弁護士、税理士、デザイナーなどのフリーランスに支払う旅費・交通費等に対する源泉徴収の有無については、謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われるものも報酬・料金の性質を有するものとして、源泉徴収の対象になると規定されています。ただし、報酬・料金等の支払者が、直接交通機関等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合には、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています。
そこで、上記のA氏のケースでは、会社は交通機関等に直接支払ってはいないため、フリーランスのA氏が立替払いを行った旅費・交通費等を精算した場合、報酬・料金に含めて源泉徴収することになります。ただし、それだけでは判断できません。フリーランスのA氏が交通機関やホテル等に立替払いを行った際、「領収書の宛名」の記載がどのようになっているかで、源泉徴収をするかどうか判断することになります。
例えば、交通機関やホテル等から「会社宛ての領収書」を受け取って精算する場合は、会社が交通機関等に直接支払いをしていませんが、実態として会社が直接支払う場合と同じものとみなして、源泉徴収しなくても問題はなさそうです。
一方で、立替払いでも、「個人宛ての領収書」を受け取って精算する場合は、宛名が会社ではなく、会社が直接交通機関等に支払っているとはいえないので、報酬・料金に含めて源泉徴収することになります。
源泉徴収の有無は、フリーランスのA氏が提示した領収書の宛名が判断材料となります。領収書に会社の名前が記載されているのであれば、フリーランスのA氏の立替払いの旅費・交通費は源泉徴収しなくても問題ありません。そして会社側は、会社の費用であり源泉徴収の有無も関わるため、A氏から受領した「会社宛ての領収書」を保存することと、A氏自身の必要経費にできない旨を伝えておく必要があります。