新着情報 新着情報

新着情報

どうする!?この売掛金 ~滞留債権への対応~

ブログ
Calendar Icon 2022.10.21

売掛金の中に、長期にわたって未回収のままになっているものはないでしょうか。
このような滞留債権は消滅時効に注意しつつ、法的手段を含めた回収方法を検討し、
貸倒れにならないように対応することが必要です。

 

■法的手段をとる前に、まずは取引先との交渉が前提 

回収ができないからといって、すぐに法的手段を行使することはせず、
まずは取引先へ訪問、電話をして、交渉を重ねたうえで、次のような手続きを検討しましょう。

 

(1) 取引先に買掛金がある場合は相殺 

取引先に売掛金と買掛金がある場合は、滞留している売掛金と買掛金とを相殺して
支払いに充当するなどの対応が考えられます。
これにより、法的手段に至らずに済ませることができます。

 

(2) 相殺後も再度取引先と交渉 

買掛金との相殺でも完済できなければ、残金の支払いについて協議する必要があります。
残金を一括で支払うのか、分割で支払うのかなど、取引先の状況を確認し、確実に支払うとの確約を得ることが大切です。
この時の協議事項は文書にしておきましょう。

 

■法的手段は回収の最終手段 

売掛金には消滅時効(5年間)があるため、放置しておくと債権が消滅してしまいます。
債務者に支払いを催告したり、債務を承認させる等の方法によって、時効期間の完成を遅らせたり、
振り出しに戻す必要があります。これを時効の完成猶予・更新といいます。
再三の訪問や、電話を繰り返しても、取引先が支払いに応じてくれない場合、
回収の最終手段として法的手段をとることも必要です。

 

(1) まずは内容証明郵便から

法的手段の前に、催告書を配達証明書付きの内容証明郵便で送付しましょう。
内容証明郵便は取引先への強い意思表示になり、送付することで事態が進展する可能性があります。
内容として、「誰が誰に対して、どのような契約に基づくどのような債権を、いくら請求しているか」等のほか、
「期限内に請求に応じない場合の措置」についても記載します。

 

【内容証明郵便とは】

いつ、どのような内容の手紙を出したのかを日本郵便が証明するものです。
同じ文面のものを3通作成し、1通は郵便局、1通は取引先へ送付、残りは差出人が保管します。

 

【内容証明を拒否された場合の対応】

受取拒否や居留守・不在の場合、内容証明郵便は7日間郵便局で保管され、
その間に債権者から受取等の連絡がないと、手元へ戻ってきます。
その際には「相手方不在」「〇月〇日に受取拒否」等と記載がされています。
受取拒否や居留守・不在で返送された場合でも、相手方に通知したことの証拠となりえますので、
必ず封筒毎保管しておくと良いでしょう。

 

(2) 法的手段は主に2つ

主な方法として「支払督促」と「少額訴訟」があり、通常の訴訟に比べて手続きが簡易で、
訴訟費用も安く抑えられます。

 

【支払督促とは】

支払督促は、申込人側の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官から相手方に支払いを督促してもらう略式の方法です。
基本的には書類のみの申込みのため簡易で時間が掛かりません。
また、支払督促をすることで強制執行するのに必要な債務名義を獲得できます。
しかし、支払督促に対して相手方が異議を申立てると、通常の民事訴訟に移行してしまいます。

 

≪ポイント≫

・書類審査のみで行われる簡易な手続き
・証拠の提出や裁判所に出向く必要が無い
・通常の手数料の半額

 

【少額訴訟とは】

少額訴訟は、債権額が60万円以下の場合に利用できる裁判制度です。
簡易裁判所での簡単で迅速な訴訟手続であり、通常の民事裁判より簡易なため、費用も時間も抑えることができます。
なお、手続きなどを弁護士に依頼することもできますが、個人間の債権の場合、費用倒れをする可能性もありますので、
慎重な判断が必要です。

 

≪ポイント≫

・原則として即日で判決

 

■どうしても回収できない場合は貸倒損失の検討を行う 

売掛金が回収できない状態が長期化する場合は、勘定科目を売掛金から長期滞留債権振り替え、
取引先において以下の事実が発生した場合は、貸倒損失等として会計処理することを検討します。
検討の結果、貸倒損失の計上は難しくても個別評価の貸倒引当金の要件を満たす場合は、
法人税法の手続きに従い貸倒引当金繰入額を費用として計上します。

 

(1) 貸倒の要件

① 金銭債権が切り捨てられた場合(法律上の貸倒れ)(法基通9-6-1)
民事再生法等による再生計画の認可の決定により債権額の切捨てがあった場合などにより、
法的手続により金銭債権が消滅した場合(回収見込みのない売掛金の「債権放棄の通知」による貸倒れも含まれる)

 

② 金銭債権全額が回収不能となった場合(事実上の貸倒れ)(法基通9-6-2)
債務者の資産状況、支払能力等からみて、金銭債権の全額を回収不能が明らかになった場合など

 

③ 一定期間取引停止後弁済がない場合等(形式上の貸倒れ)(法基準9-6-3)
継続的な取引による売掛債権で取引停止後1年以上経過した場合又は同一地域の債務者の債権総額が回収旅費等に満たない場合

 

売掛金は、滞る事なく回収できる事が望ましいですが、万が一の際の対応としての法的手続きのご紹介をさせていただきました。
お困りの際の一助となれば幸いです。

 

最終更新日:2022/10/20