5,000万円を超える国外財産を有する場合は「国外財産調書」提出が必要
皆様は「国外財産調書制度」というものをご存知でしょうか。
当制度は、国外にその年の12月31日において価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する方はその財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を提出する制度になります。
経済活動のグローバル化が進展する中で海外資産をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
海外に財産をもっていると聞くと映画や某ヒットマンのように隠し財産をもっているとイメージすることはありませんか。
ですが、昨今のCRS制度(※1)により外国の金融口座を利用した取引もOECD加盟国(※2)の間で情報共有されることとなり隠し財産を海外に持つことは難しくなっているのではないでしょうか。
パナマ文書事件やパラダイス文書事件をきっかけに透明性の必要性と税務回避対策の重要性についての機運が高まっていった結果とも言えるでしょう。
そんな国外財産調書制度ですが、少し掘り下げてご紹介いたします。
~国外財産の価額~
国外にある財産の価額が5,000万円を超えるとありますが、どのように金額をきめるのでしょうか。当制度において国外財産の価額はその年の12月31日における「時価」又は時価に準ずるものとしての「見積価額」によることとされています。また邦貨換算は同日における外国為替の売買相場によることとされています。
~記載事項~
国外財産調書には提出者の氏名・住所・マイナンバーに加え、国外財産の種類・数量・価額・所在等を記載することとされております。
~その他の措置~
国外財産調書を提出期限内に提出した場合には、国外財産調書に記載がある国外財産に係る所得税等・相続税の申告漏れが生じたときであっても、その国外財産に係る過少申告加算税等が5%軽減されます。
また、国外財産調書の提出が提出期限内にない場合や記載すべき国外財産の記載がない又は記載が不十分の場合に、その国外財産に係る所得税等・相続税の申告漏れが生じたときは、その国外財産に係る過少申告加算税等が5%加重されます。
出典:国税庁HP
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/kokugai_zaisan/pdf/kaigaizaisan_tirashi.pdf
なお、届出期限は令和4年分までは翌年の3月15日ですが、令和5年以降はその翌年の6月30日が提出期限となります。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/kokugai_zaisan/index.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7456.htm
※1 CRS制度
外国の金融機関等を利用した国際的な脱税及び租税回避に対処するため、OECDにおいて、非居住者に係る金融口座情報を税務当局間で自動的に交換する制度の国際基準です。
※2 OECD加盟国
「Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構」の略で、1948年発足後、2023年現在38か国(EU加盟国22か国 + その他16か国)で構成されています。日本は1964年に加盟しています。