法定調書の種類
法定調書とは、『所得税法』、『相続税法』、『租税特別措置法』および『内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(以下、国外送金等調書法という)』の規定により、原則源泉徴収義務者が税務署への提出が義務づけられている資料をいいます。
現在63種類(令和5年9月現在)の法定調書があり、主要な法定調書を紹介します。
1 所得税法に規定するもの(全43種類)
⑴ 給与所得の源泉徴収票
役員や従業員に支払った給与(賞与)の支払金額と源泉徴収税額等を記載
⑵ 退職所得の源泉徴収票
役員や従業員に支払った退職金の支払金額と源泉徴収税額等を記載
⑶ 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
個人事業主やフリーランスへの報酬・料金の支払金額と源泉徴収税額等を記載
⑷ 不動産の使用料等の支払調書
不動産等の賃貸料などの支払金額等に関する情報等を記載
⑸ 不動産等の譲受けの対価の支払調書
譲受けの態様が売買又は交換かにより、支払金額や交換した資産の種類等を記載
⑹ 配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書
株式の数や支払確定年月日など支払金額と源泉徴収税額等を記載
2 相続税法に規定するもの(全5種類)
⑴ 生命保険金・共済金受取人別支払調書
生命保険会社や共済団体が、生命保険金や共済金を支払った際に、その受取人ごとに支払金額等を記載
⑵ 損害(死亡)保険金・共済金受取人別支払調書
損害保険会社や共済団体が損害保険金や共済金(特に死亡保険金)を支払った際に、その受取人ごとに支払金額等を記載
3 租税特別措置法に規定するもの(全10種類)
⑴ 上場株式等の配当等の支払を受ける大口の個人株主に関する報告書
通常、発行済株式総数の3%以上を保有する個人株主に対して支払われた配当等の詳細を記載
⑵ 非課税口座年間取引報告書
NISA(個人型投資信託)やジュニアNISAなど、特定の法律に基づき税制上の特典が与えられる口座における取引内容等を提出する書類
⑶ 住宅取得資金に係る借入金等の年末残高調書
住宅ローン控除を受けるために必要な書類の一つ。住宅を取得するために借入れた資金の年末時点での残高を報告するもので、借入れた住宅ローンの契約内容や金額、借入期間等の詳細を記載
4 国外送金等調書法に規定するもの(全5種類)
⑴ 国外送金等調書
金融機関を通じて国外へ送金したり、国外からの送金等の受領をしたりした場合に、資金移動の透明性を確保や、マネーロンダリングやテロ資金供与の防止等を目的とし、金融機関が提出する国内外送金や振込などの取引情報等をまとめた書類
⑵ 国外財産調書
居住者の方で、国外財産を一定金額以上有する者は、その種類、数量及び価格その他必要な事項等を記載した調書
⑶ 財産債務調書
居住者の方で、国内外を問わず一定金額以上の財産を有する者は、その種類、数量及び価格その他必要な事項等を記載した調書
※なお、前記⑵及び⑶の調書は、同法の規定により居住者の個人の方が該当する場合に提出が義務付けられています。また、2022年の税制改正において、財産債務調書の提出要件が改正され、従来の提出要件のほか2023年分以降は所得がゼロであっても、財産価額10億円を超える財産を所有している場合には、財産債務調書の提出義務が生じました。
国税では申告状況や支払調書などの情報を集約するシステムを備えており、そのデータをもとに提出義務がありそうな人を対象に「お尋ね」を送付する場合があります。富裕層の相続税申告漏れへの対応として、財産債務調書は重要なデータとなり得ます。
まとめ
これらの法定調書は、支払者から税務署に提出される書類と、納税者が確定申告の際に添付を義務づけて提出させる書類があり、それぞれ提出の時期や金額基準等が定められています。
また、支払者から税務署に提出される書類を納税者にも交付することで、確定申告を行う際の重要な参考資料となり、結果、適正な申告納税に繫がることができます。