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個人事業主の事業用固定資産売却に注意、事業用資産でも「譲渡所得」がポイント

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Calendar Icon 2025.10.15

―事業用でも「譲渡所得」がポイント―

個人事業主として事業を営む中で、事業用の車両や機械、事務所などの固定資産を売却する機会があるかもしれません。こうした売却においては、確定申告時の「所得区分」に注意が必要です。

 

■法人と個人で異なる「売却益」の扱い

法人の場合、固定資産の売却益は「固定資産売却益」として法人所得に計上するのみですが、個人事業主の場合は、たとえ事業用の固定資産であっても、売却益は原則として「譲渡所得」として申告する必要があります。

この点を誤って「事業所得」として処理してしまうと、申告誤りとなるリスクがあります。

 

■譲渡所得の基本的な計算方法

譲渡所得は、以下の式で算出されます。

譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(最高50万円)

この計算により得られた金額が、他の所得と合算されて総合課税されるのが基本です。なお、特別控除の50万円は譲渡益がある場合に適用されるため、実際には課税が生じないケースも少なくありません。

なお、土地や建物を売ったときは、他の所得とは分離して計算することになります。

 

■例外的に「事業所得」となるケースも

ただし、以下のような資産については譲渡所得ではなく、事業所得として扱われます。

・使用期間が1年未満の減価償却資産
・取得価額が10万円未満の減価償却資産
・取得価額が20万円未満で、一括償却の対象となっている資産

また、そもそも「生活に通常必要な動産」の売却(家具や家電など)については、譲渡所得の課税対象外です。

  

■車両など、事業とプライベートを併用している資産の注意点

例えば、事業用車両のようにプライベートと兼用している資産を売却する場合は、使用割合を按分して所得計算を行います。

事業専用割合が70%であった車両を売却した場合、売却価額のうち70%が譲渡所得の計算対象となり、残りの30%は生活用資産として非課税です。ただし、この生活用部分で譲渡損失が出たとしても、損益通算などには使えません。

譲渡所得における「取得費」は、以下のように算出されます。

取得費=(取得価額-減価償却累計額)×事業専用割合

 

■消費税の取扱いにも注意

課税事業者であれば、売却時の消費税の取扱いも忘れてはなりません。消費税法上、資産の譲渡は課税取引に該当するため、事業専用割合に応じた部分(たとえば70%)については「課税売上」となります。

また、消費税計算を税抜経理方式で行っていた場合には、譲渡所得の譲渡価額も税抜で算出します。たとえば、車を税込110万円で売却した場合、事業専用割合が70%であれば、

・譲渡価額:110万円×70%=77万円
・税抜ベース:77万円÷1.1=70万円
・譲渡所得上の譲渡価額:70万円
・消費税課税売上:70万円

という計算になります。

なお、上述の通り譲渡所得には50万円の特別控除が適用されるため、実務上、車両などを売却した場合に課税されるケースは少ないともいえます。

 

■まとめ:資産売却時は「所得区分」と「消費税」に要注意

個人事業主が事業用資産を売却した場合、思わぬ税務リスクを避けるためには、「譲渡所得」として正しく申告することが肝要です。事業所得との区分を見誤ると、修正申告や追徴の対象となる可能性もあります。

加えて、消費税の経理処理や生活用との按分など、慎重な判断が求められる場面も多々あります。資産の売却を検討する際には、事前に税理士などの専門家に相談し、正確な申告と適切な節税につなげましょう。