個人の立退料に係る税務の取扱いに注意、計算ミスで納税額が大きくなる可能性も
立退料とは、借りている土地や借家を貸し手側の賃貸人の要請により明け渡す際、借り手側に支払う補償金などの金銭のことを言います。例えば、アパートや店舗などの賃貸人が売却目的や建物の改修工事などで、賃借人に立ち退いてもらうときに発生します。立退料は取り扱う金額が大きくなるケースもあり、計算ミスにより納税額が大きくなる可能性もあるため、立退料を個人・法人が受け取ったり支払ったりした場合は注意が必要です。
個人が、立退料を受け取った場合には、 (1)資産の消滅の対価補償としての性格のものは、家屋の明渡しによって消滅する権利の対価の額に相当する金額が譲渡所得、(2)収入金額又は必要経費の補填としての性格のものは、立退きに伴って、その家屋で行っていた事業の休業等による収入金額又は必要経費を補填する金額が事業所得等、(3)その他の性格のものは、(1)及び(2)に該当しない場合は一時所得、との区分でそれぞれの収入金額となります。
他方、建物を賃貸している場合に、借家人に立ち退いてもらうため、立退料を支払った場合には、(1)賃貸している建物やその敷地を譲渡するために支払う立退料は、譲渡に要した費用として譲渡所得の金額の計算上控除(法人は経費に計上)され、(2)(1)に該当しない立退料で、不動産所得の基因となっていた建物の賃借人を立ち退かすために支払う立退料は、不動産所得の金額の計算上必要経費(法人は経費に計上)になります。
さらに、(3)土地、建物等を取得する際に、その土地、建物等を使用していた者に支払う立退料は、土地、建物等の取得費又は取得価額(法人は建物等の取得価額)になり、(4)敷地のみを賃貸し、建物の所有者が借地人である場合に、借地人に立ち退いてもらうための立退料は、通常、借地権の買戻しの対価となりますので土地の取得費(法人は同じように土地の取得価額)になります。
法人の受け取った立退料は、全て益金となり、他の所得金額と合算することになります。また、消費税については、借地権の譲渡や休業補償金などといった性格の立退料を受け取った場合、通常、消費税は不課税です。しかし、賃借人の地位の譲渡(旧賃借人から新賃借人へ賃借権が移転する)は課税対象になります。消費税は通常、仕入税額控除の対象外ですが、賃借人の地位の譲渡は仕入税額控除の対象になります。