消費税の納税義務の成立の時期と注意点 取引の態様に応じて異なる譲渡等の時期
消費税の納税義務はどの時点で成立するのでしょうか。国内取引の場合には、課税資産の譲渡や貸付け及び役務の提供をした時に消費税の納税義務が成立します。納税義務はその都度成立しますが、申告や納付は課税期間ごとに行います。課税資産の譲渡等の時期は、原則として、その取引の態様に応じた資産の引渡しの時または役務の提供の時となります。その引渡しや役務の提供時期について取引の態様に応じて例示すると以下のとおりになります。
(1)棚卸資産の販売または固定資産の譲渡の時期は、原則としてその引渡しの日になります。
(2)資産の貸付けについては、契約や慣習などにより支払日が定められている場合はその定められた支払日となります。
(3)請負による役務の提供の時期は、原則として、物の引渡しを要する請負契約にあっては目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しない請負契約にあってはその約した役務の全部の提供を完了した日で、請負を除く人的役務の提供の時期は、原則としてその人的役務の提供を完了した日となります。
(4)リース譲渡で延払基準を適用している場合や工事の請負で工事進行基準を適用している場合には、それらの基準に従って売上を計上する日とすることができます。
注意点としては、インターネットなど電気通信回線を介して、国内の事業者・消費者に対して行われる電子書籍・広告の配信等のサービスの提供は、国内取引として消費税が課税されていることがあります。また、国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」のうち、「広告の配信」など「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、その役務の提供を受けた国内事業者に申告納税義務を課す「リバースチャージ方式」が導入されていますが、この場合の納税義務の成立は、「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた時となります。なお、申告や納税は、課税資産の譲渡等と併せて課税期間ごとに行います。
課税資産の引渡しや役務の提供が行われる前に、前受金の収受が行われた場合には、その収受の時にかかわらず、現実に課税資産の引渡し等をした時が課税資産の譲渡等をした時です。未収金についても代金決済の時期に関係なく、課税資産の引渡し等をした時が課税資産の譲渡等をした時となるほか、所得税法上の現金主義の適用を受けている小規模事業者は、対価受領の日を資産の譲渡等の時期とすることができます。