物流の2024年問題 物流業界の労働時間規制による日本の産業界への影響
物流の2024年問題とは、2024年4月1日以降、働き方改革関連法によって自動車運転業務に対し、
年間の時間外労働時間の上限が年960時間(休日労働含まず)に制限されることで発生する諸問題です。
2019年4月より働き方改革関連法が施行され、時間外労働の上限は原則として年360時間、
労使間で三六協定を結んだ場合は年720時間に制限されました。
ただし、自動車運転業務は2024年4月まで時間外労働の上限規制適用が猶予され、
年720時間の時間外労働制限と業界の実情が乖離していることから、
年960時間の時間外労働制限とされ適用されることとなりました。
この労働時間規制等により運送業界は勿論ひいては日本の産業界にも多大な影響を及ぼすことが懸念されています。
日本の国内貨物は、輸送した貨物の重量ベースを表すトンベースでは9割超、
輸送した貨物の重量にそれぞれの貨物の輸送距離を乗じたトンキロベースでは約5割が自動車運送によるものです。
業界を支えるトラックドライバーの年間労働時間は全産業と比較して約2割長く、
年間所得額は約1割低い水準となっています。
また、全日本トラック協会のアンケートでは、トラックドライバーのうち約29%(長距離輸送では約39%)が
2024年4月以降規制対象となる時間外労働年960時間超となることが既に判明しています。
トラックドライバーの長時間労働の主要因は、長時間の運転時間、荷待ち時間、荷役作業等が挙げられます。
これらの自動車運転業務を取り巻く労働環境が物流業界の構造的な問題となり、深刻な人手不足を引き起こしています。
そのような課題を抱える中、労働時間規制によりトラックの総稼働時間の減少が加速すれば、
2024年度には輸送能力が約14%(4億トン相当)不足する可能性があり、このまま何も対策を講じなければ
2030年度には輸送能力が約34%(9億トン相当)不足する可能性が指摘されています。
また、その影響は物流業界のみならず物流コストの上昇という形で産業界にも多大な影響を及ぼします。
政府は抜本的な課題解決のために物流革新に向けた政策パッケージを打ち出しており、
それには物流DXの推進や業務の効率化に向けた環境整備等が盛り込まれています。
荷主、事業者、消費者が一体となって物流業界の構造的な課題を解決しなくては、
2024年問題が引き起こす影響を免れることはできないのです。