生命保険を払済みに変更した場合の取扱い 洗替処理が必要となる場合もあるので注意
払済み保険とは、手続きをした時点から保険料をストップして、今まで支払いをしてきた保険料で積み立てられていた金額(責任準備金や解約返戻金と言われるもの)で一定の保障額の保険を終身や満期まで持てるように変更するものです。例えば、企業が過去に利益対策で加入した生命保険が多くあり、保険料の支払いが厳しくなってきたときなどに、払済みに変更する手続きをするケースがよくみられます。
払済みに変更した場合、保険期間は変わらずに、その後の保険料の支払いがなくなります。解約返戻率は少しずつ上がっていきますが、保険金額は減額され、変更時に解約返戻金は発生しません。保険金額は減額されてしまうので保障という面では不安ですが、その後の保険料支払いがなくなるメリットがあります。
ただし、税務的には、既存の保険を一旦解約して、その解約返戻金をもって新たな一時払保険の保険料に充当したと考えます。そうなると原則的には払済みに変更した時点で解約返戻金を受け取っていないにもかかわらず、解約返戻金相当額から、その保険契約によりこれまで資産計上した金額を控除した差額を雑収入に計上し、一時払い保険料の分は資産に計上し期間の経過に応じて取り崩していくことになります。したがって、解約返戻金相当額が大きい場合には思わぬ利益が出てしまい、相当な法人税の負担が生じることになります。
ただし、通達では保険、終身保険、定期保険、第三分野保険及び年金保険(特約が付加されていないものに限る)から同種類の払済み保険に変更した場合に、既往の資産計上額を保険事故の発生または解約失効等により契約が終了するまで計上しているときは、これを認めるとされ、洗替処理は任意となります。
以前は養老保険、終身保険、年金保険が洗替処理不要でしたが、改正通達により2019年7月8日以後は定期保険、第三分野保険も対象となりました。
注意したいのは、洗替処理が不要となる要件として、特約が付加されていないこと及び同種類への払済み保険への変更であることです。各保険会社は様々な保険商品を取り扱っているので、洗替処理しなくても構わないのかを、保険会社に確認しておく必要があると思われます。なお、通達改正前に契約した保険でも、2019年7月8日以後に払済みに変更した場合は改正後の取扱いによることとされています。