「タワマン節税」抑止の新算定ルール通達 2024年1月1日以後の相続・贈与から適用
国税庁は、マンションの相続税評価額が実勢価格の平均4割程度にとどまることから、その評価額の低さを利用したマンション節税、いわゆる「タワマン節税」を抑止するため、評価額の新算定ルールを定めた通達を公表しました。本通達は、7月21日から8月20日まで意見公募が行われましたが、原案で示された評価方法から特段の変更はありません。新たな算定ルールは、2024年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与から適用されます。
相続税・贈与税における財産の価額は、相続税法の規定により、「財産の取得の時における時価」とされており、国税庁では財産評価基本通達に各種財産の具体的な評価方法を定めています。その評価方法については、相続税法の時価主義の下、より適正なものとなるよう見直しを行っている中で、居住用の区分所有財産(いわゆるマンション)の「相続税評価額」は、「時価(市場売買価格)」との大きな乖離が生じているケースも確認されています。
そこで、国税庁が設置した有識者会議において、居住用の区分所有財産の相続税評価額について、実勢価格との乖離の実態を踏まえた上で適正化が検討された結果、居住用の区分所有財産の評価を新設して評価することとされ、評価通達が改正されました。
まず、一室の区分所有権等に係る敷地利用権の価額は、「自用地としての価額」に、一定の区分所有補正率を乗じて計算した価額を、その「自用地としての価額」とみなして評価することとします。
具体的には、「築年数」、「総階数指数」、「所在階」、「敷地持分狭小度」の4指数に基づいて評価乖離率を求め、1を乖離率で除した評価水準が0.6未満の場合、従来の評価額に評価乖離率と0.6を掛けて補正し、評価水準が1を超える場合、従来の評価額に評価乖離率のみを掛けて補正します。
区分所有者が、一棟の区分所有建物に存する全ての専有部分、一棟の区分所有建物の敷地のいずれも単独で所有している場合は、「区分所有補正率」は1を下限とします。
一室の区分所有権等に係る区分所有権の価額については、「自用家屋としての価額」に、左記と同様の補正率を乗じて計算した価額をその「自用家屋としての価額」とみなして評価します。国税庁では、これらの居住用の区分所有財産の評価について、納税者が簡易に計算するためのツールを用意する予定です。結局、実勢価額の4割程度にとどまっていた評価額が、新査定ルールの導入で6割以上に上がる見通しです。